忘れ物取扱所

六甲ミーツアート。
クワクボリョウタさんの作品を拝見できることも、六甲への小遠征を決意した大きな理由です。
そして本当に見る甲斐あるものを見たのでした。
(以下、とりとめないのですが、若干のネタバレを含みます。撮影禁止でしたので映像はありません。)
 
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《lost and found (忘れ物取扱所)》
小文字のlostが付くクワクボさん作品。
 
小雨降るなかたどりついた会場。案内されて入る光の入らない広めの部屋。もともとはロッカールーム?
 
光と影の作品です。
仕組みはごくシンプルに感じられます。構成要素が明解でごく解りやすいのです。
 
作品にキーワードを付けるなら。
「投影」
「マルチスクリーン」
「フレーム」
 
(「マルチスクリーン」なんて言葉がするっと出てくるのは、Eテレ『テクネ』のおかげさまですね。)
 
白く塗られた壁に投影される映像。それだけ見続けていると当方はたぶんさっさと酔ってしまう。または、心が逸れてしまうでしょう。
でも、「前景」に、たしかな、なじみ深い、身近に感じられるモノが、不思議な身振りでそれぞれの光源に照らされて並んでいるから。
モノの力に導かれ仕組みにまで眼が魅かれ、いつまでも心をひきとめられます。
 
 懐かしいモノたち。子供のときポケットに入れてしまっていたもの。使っていたもの。欲しかったもの。やっと手に入れた宝物。
 
一方、カタチを変え、ピントを変え、あるいは現れては消えることをそれぞれのスピードで繰り返す影たち。
 
壁面の影の秘めやかさ。LED光源により照らし出されるモノのかもす確かさ/明暗の鮮やかさ。
 
仕組みと対比が興味深く。投影物を囲む白線の周りをまわって観察すると。
この作品が細心の注意を払い構成・調整された結果成り立っているらしいことに気づきます。
 
楽しくも画期的なことには、壁面に投影された影映像に、鑑賞者が自分の影で参加できるのです。その動き・現れ方も驚きを含みます。
 
改めて前面に立ち。少しずつ立ち位置を変えてみる。
 
 静けさ。そして、モーター音。コマがたてる不規則な音。秒針のかすかな音などー。
 
光と影のプロデュース・・・
 
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氏がいつかtwitterで、『文脈に依存しなくて「も」意義をもつ作品体験』とつぶやかれていたのは。
こういうことなんだな…。
 
感想を言葉にするのももどかしい、新鮮で素敵な「作品体験」でした。
それはまさしく「作品体験」だった、のだと思ふ。
 
明瞭なインタラクティブをねらった作品ならともかく。
他人である鑑賞者を「作品体験」へ誘う。どうしたらそんな作品を企画することが可能なのでしょう?
\(^o^)/。( <− お手上げのポーズ ) 
 
(冒険は先が長そうです…。
 
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拝見している間、たぶん1時間くらい・・・「水飲み鳥」がピクリとも動かなかったのが心残りです(笑)。
わたしの心の百分の一くらいが、まだあの場所にあるのではないかしら。
 
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イラレで安易らくがき