娘深雪

土曜日、国立近代美術館で開催されている「上村松園展(後期)」へ行ってきました。
前回に比べ、人が倍増していました。
 
前に観たときは、主題と画家本人へ思いを馳せながら拝見しました。
今回は、輪郭線の素晴らしさ、着物の凝った柄、顔料の発色の美しさへ眼が行きました。
 
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せっかくなので。「明和電機」社長:土佐信道さんが中学生の頃に見て惚れたという「娘深雪」について。
 
後期のみ展示です。前期、「焔」のあった位置に展示してあるのが、あまりに対照的なので感じ入りました。
 
なるほど〜。
本当に清楚な美人さんです(*^^*)。
 
少女から大人へのまさに過渡期にある娘の、とまどい驚く表情が匂い立つように可憐で美しく。おすべらかしにし垂らした黒髪のやさしさ。身体のひねり方のなんともいえない柔らかさ。
ちょっとませた中学生男子の心を真っ直ぐ捕らえそうですー。
 
それにしても、この絵だけではないのですが。伝統的和服の世界と、松園さんの技量による相乗。色彩と模様の響き合いの効果は、ミラクルな域に達しています。
 
和服はサーモンピンク系に全面絞り。裾と袂はなめらかに続くクリーム色で、若い黄緑色の笹が描かれています。葉に同心円の模様が抜かれているのは、多分、雨粒が当たっているのを表しているのでしょう。
帯はセルリアン系ブルーの幅広なストライプに、金色の八重菊の大輪。非対称な片リボンに結ばれています。
襟からのぞく浅黄色とオフホワイト。
袖口と袂からのぞくえんじ色のストライプ。
(すみません。日本画顔料と和服の知識があれば、もっとましな説明ができるのですが。)
 
言葉で表現すると、こてこてのようなのにっ。
実際に見ると、風が吹き抜けていくように爽やかでやわらかく若々しい配色。
かなわないというか、おそれいるしかない世界です・・・。
 
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自分も、中学生のとき、衝撃を受けた日本画がありました。
 
県に、まず滅多に来ない「日展」の巡回展がやってきたのです。まだ美術館はなく、会場は博物館。作品も選ばれた何割かだけで。
日展」へ行ってきなさいね。中学二年の夏休みの、数少ない課題のひとつでした。
 
住んでいたのは宮崎県。美術展と言えば、それまで、県展、せいぜい二科展くらいしか見たことがありませんでした。
 
圧倒されて見てまわった会場中、一枚の日本画の前で時間が止まりました。
高名な画家の作品でしたが、当時はその人の名前も知りませんでした。
 
東山魁夷。作品は「凍池」。
 
絵一枚が具象を超えて成しえる静謐な世界の深さに、驚愕。
 
その後、繰り返し思い出してはどうしてよいか分からず、とりあえず父親にお願いし、画集を買ってもらったのでした。
絵を描く進路を漫然と思っていた自分の大甘さと空虚さに、ほぼ気づいた頃でした。