慶応大学SFCオープンリサーチフォーラム

トークショー『未知の領域へ広がるデザイン』
2011年11月23日(水・祝)12:00〜 @六本木ミッドタウンホールroom9
 土佐信道明和電機代表取締役社長)
 中村勇吾(インターフェースデザイナー)
 野田篤司宇宙機エンジニア)
 平野啓一郎(小説家)
 山中俊治(政策・メディア研究科教授)
 
慶応大学SFC研究所とは。
http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/
 
六本木ミッドタウンのホールとカンファレンススペースを貸し切ったオープン・リサーチ・フォーラムであります。
 
場違いでもしょうがないんです。行ってきました。
開場と同時にするっと滑り込みましたが、立ち見も出る大盛況だったようです。
UST配信もあったんですね。
 
期待にたがわず、ものすごくおもしろかった。
ツボが多かったです。
今夜は、夫に、「デザイン」について熱く語ってしまいました。
 
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とりあえず、印象に残ったこと断片メモ。かなり意訳がはいっているので、当方の勘違いがあるかもしれません;
 
えと。明和電機社長土佐信道さんのお話は、きょうはちょっと省略!(後日に触れます、多分;)山中先生は、出演者の紹介と話題をつなぐことに専念されていらっしゃいました。先生のお仕事のお話も伺いたかったですー。
 
某組織(!)で宇宙機設計がお仕事の野田篤司さん。
・具体的なミッションが計画され要求がまずある。宇宙機の「デザイン」=「設計」は形から入ることは実際には重要でなく、目的からつくる。(個人的には)かっこいい形にしたいが、企画にその余裕はない。でもかっこよくしたい。かっちょよくすることで機能が犠牲になるのは避けるべき。(<−例:スペースシャトル)。
・かっこよさを感じる気持ちは、性能がいいことを知ってとか、マスメディアによってなじむとか、後からくる。
・予算は税金からなので、マーケティングする相手、説得する相手は国民。
 
義足デザイナーが主役の小説「形だけの愛」を著し、小説を書くことに「デザイン」の考え方を持ち込もうとしていらっしゃる平野啓一郎さん。
・デザインは広い意味で「形の問題」ととらえている。形はスタンドアローンで自立しえず、何かとの関係で成り立っている。
個人主義の時代の小説。書き手と読者の多様化。困難な状況のなかで小説を社会へエントリー(共同性獲得)するためのインターフェースとして、デザインを考えている。(具体的な小説のデザインは、繊細で技術的な話・・・。
・それは障碍者の社会へのエントリーとも共通点があるように思う。
・読んだ人の価値観を変えたいという野心をもっている。読者の価値観を壊し再編成までするように。文学者の個性を社会へどうエントリーするか。
・文学は現在、メディア上、劣勢。WEB上の文章の合理化。ゆっくり味わう言葉とは処理の仕方が変わってきている。純文学小説家としての居場所の仕方を考えるうえで、「形のイメージ」=デザインを考えるようになった。
 
Eテレ『デザイン「あ」』監修や、インターフェースデザイナーとして知られている中村勇吾さん。
・自分の仕事はアニメーターだと思っている。情報システムにプラスする、背後にある「動き」「感触」「質感」のデザイン。
・現在は「ワク」の過渡期(紙からスマフォへ、のような)。
・商品CM、子供向けの番組、のようにワクをはめられるのが好き。
 
上記のような話から派生して、興味深い話題がたくさんあったのです。
・「デザイン」の意味の拡散の問題。
・「かっちょよくしい」=世間的かっこつけとマスメディアの問題。「かっこよさ」はどこからくるか。ゼロ戦とF15とジャンボ機。
・機能と設計とデザインの関係。
・あらかじめ「フレーム」がありそこに配置するのがデザイン。アートは核からはじまり後からトリミングする。フレームが与えられると強度が増す。
 
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全体を通して、「未知の領域へ広がるデザイン」というタイトルにふさわしい、人選であり、内容でした!
いきなり終了しましたが。そのなかで、まとまって見えるような気がしたこと。
 
デザインとは。伝えたいこと、核、思惑、目的、必要な機能、そのようなものがあるとき。それを社会や外界へどう適用するか、そこで必要となるインターフェースとして位置付けられる。
デザインのあり方に重要なのは、メディアとの関係性。
 
土佐氏、平野氏、野田氏の3人が、はじまりとして確固とした目的があり、そのためのデザインについての取り組みを真正面から語るのに対し。
フレームがあるのが好きなんです、とふわっと語る中村氏が、デザインについては一番自由に遊んでいらっしゃるように見えたのが、興味深かったです。
 
デザインという、「形」=ビジュアルに表出するものがテーマの、「トークショー」なので。
そこに、平野啓一郎さんという言葉つかいのプロが参加されてお話が深まった。
「小説家なのでビジュアル(資料)は使いません。」かっこいいー。
昨日と一昨日、平野さんの2冊の小説を読みました。読んでよかった。平野さんが・・・その強力な知性が、純文学小説家として何をされたいのか、よく腑に落ちました。

かたちだけの愛

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ドーン (100周年書き下ろし)

ドーン (100周年書き下ろし)

 
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せっかくなので、早めに会場へ行き、展示会場となっていたホールへもお邪魔。
数名の学生さんを煩わせ、興味深く思ったいくつかの展示について、みっちり内容を解説していただきました。
来場者へきちんと気を配っている学生さんがたくさんいらしてよかったです。ありがとうございました。